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九日(崔国輔)

九日
きゅうじつ
さいこく
  • 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻一百十九、趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十二(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)、『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、60頁)、『唐詩品彙』巻四十八、他
  • 七言絶句。黄・郷・裳(平声陽韻)。
  • ウィキソース「九日 (崔國輔)」参照。
  • 九日 … 陰暦九月九日、重陽の節句。この節句のならわしとして、小高い丘に登り、茱萸を髪にかざし、菊の花を浮かべた酒を飲むなどして一年の厄払いをする習慣があった。ウィキペディア【重陽】参照。
  • この詩は、作者が竟陵きょうりょう(今の湖北省天門市)に左遷されてから三年ほど経った陰暦九月九日、重陽の節句に小高い丘に登り、望郷の想いを詠んだもの。
  • 崔国輔 … 生没年不詳。盛唐の詩人。山陰(浙江省紹興)の人。一説に呉郡(江蘇省)の人ともいう。あざなは不詳。開元十四年(726)、進士に及第。集賢院直学士・礼部郎中を歴任した。天宝十一載(752年)、御史大夫の王鉷おうこうが死罪となり、その近親者であったので連座して竟陵きょうりょう(今の湖北省天門市)の司馬(郡の属官)に左遷された。楽府の短い詩を得意とした。ウィキペディア【崔國輔】(中文)参照。
江邊楓落菊花黃
江辺こうへん かえでちてきくなり
  • 江辺 … 川のほとり。竟陵きょうりょうは漢水の南岸にあるので、ここでは漢水のほとりを指す。
  • 楓 … 楓樹ふうじゅ。カエデの一種。日本のカエデとは異なる。ウィキペディア【フウ】参照。
  • 菊花黄 … 菊の花が黄色く咲いた。『礼記』がつりょう篇に「しゅうつき、……きくこうり、さいすなわじゅうまつきんりくす」(季秋之月、……鞠有黃華、豺乃祭獸戮禽)とある。季秋は、陰暦九月のこと。ウィキソース「禮記/月令」参照。
少長登高一望鄉
少長しょうちょう たかきにのぼってひとえにきょうのぞ
  • 少長 … 老いも若きも。『史記』項羽本紀に「沛公はいこういわく、きみ少長しょうちょういずれぞ、と。りょういわく、しんよりちょうぜり、と」(沛公曰、孰與君少長。良曰、長於臣)とある。ウィキソース「史記/卷007」参照。
  • 登高 … 小高い丘に登って。
  • 一 … ひたすらに。
  • 望郷 … 故郷のかたを眺めやる。
九日陶家雖載酒
きゅうじつ とう さけすといえど
  • 九日 … 九月九日。
  • 陶家 … 晋の陶淵明の家。陶淵明に江州の刺史王弘が酒を送り届けてくれた故事に基づく。『続晋陽秋』に「王弘おうこうこうしゅう刺史ししたり、陶潜とうせんがつここのさけし、宅辺たくへんとうもときくそうちゅういて、えいみ、そばす。いくばくもなくしていちはくひといたるを望見ぼうけんす。すなわ刺史しし王宏おうこうさけおくるなり。即便すなわいてんでのちかえる」(王弘爲江州刺史、陶潛九月九日無酒、於宅邊東籬下菊叢中、摘盈把、坐其側。未幾望見一白衣人至。乃刺史王宏送酒也。即便就酌而後歸)とある。ウィキソース「續晉陽秋」参照。また『南史』陶潜伝に「かつがつここのさけし、宅辺たくへんでてきくそうちゅうし、これひさしうす。こうさけおくりていたるにい、即便すなわいてみ、うてのちかえる」(嘗九月九日無酒、出宅邊菊叢中坐、久之。逢弘送酒至、即便就酌、醉而後歸)とある。ウィキソース「南史/卷75」参照。
  • 雖載酒 … 私の家にも酒を運んでくれる人はあるけれども。陶淵明の「飲酒二十首 其の十八」に「ときさいわいにもこうひとの、にごりざけせてまどところはらう」(時賴好事人、載醪袪所惑)とある。ウィキソース「飲酒二十首」参照。
三年楚客已霑裳
三年さんねん かく すでもすそうるお
  • 三年 … 謫居たっきょすること三年。
  • 楚客 … 楚の国に旅住まいする人。作者自身を指す。竟陵は、昔の楚の国に属する。江淹の「休上人別怨」(『文選』巻三十一、『玉台新詠』巻五では「休上人怨別」に作る)に「西北より秋風至り、楚客はこころ悠なるかな」(西北秋風至、楚客心悠哉)とある。ウィキソース「休上人別怨」参照。
  • 已 … もはや。もう。
  • 霑裳 … 着物のすそを濡らす。涙がしきりに流れることの形容。裳は、「も」「もすそ」と訓読みする。衣の下半をいう。張衡の「四愁の詩」(『文選』巻二十九、『玉台新詠』巻九)に「そばたてて西望せいぼうすればなみだもすそうるおす」(側身西望涕沾裳)とある。ウィキソース「四愁詩」参照。
  • 霑 … 濡らす。『古今詩刪』『唐詩品彙』では「沾」に作る。同義。
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