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除夜作(高適)

除夜作
じょさく
高適こうせき
  • 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻二百十四、『高常侍集』巻八(『四部叢刊 初篇集部』所収)、『高常侍集』巻八(『唐五十家詩集』所収)、『万首唐人絶句』七言・巻四(明嘉靖刊本影印、文学古籍刊行社、1955年)、『古今詩刪』巻二十一(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、59頁)、『唐詩品彙』巻四十八、『唐詩別裁集』巻十九、『唐人万首絶句選』巻三、他
  • 七言絶句。眠・然・年(平声先韻)。
  • ウィキソース「除夜作 (高適)」「高常侍集 (四部叢刊本)/卷第八」参照。
  • 詩題 … 『万首唐人絶句』『唐詩別裁集』『唐人万首絶句選』では「除夜」に作る。
  • 除夜 … おおみその夜。除夕。歳除。
  • この詩は、作者が旅先で大晦日の夜を迎え、そのときの感慨を詠んだもの。場所及び制作年は不明であるが、劉開揚『高適詩集編年箋註』(中華書局、1981年)の年譜には、天宝九載(750)、四十七歳の作とある。
  • 高適 … ?~765。盛唐の詩人。滄州渤海(山東省)の人。あざなは達夫または仲武。天宝八載(749)、有道科に推挙され、受験して及第。封丘(河南省封丘県)の尉に任ぜられたが辞任し、辺塞を遊歴した。晩年は刑部侍郎、左散騎常侍に至った。辺塞詩人として岑参とともに「高岑」と並び称される。『高常侍集』八巻がある。ウィキペディア【高適】参照。
旅館寒燈獨不眠
旅館りょかん寒灯かんとう ひとねむらず
  • 旅館 … 宿屋。旅籠屋。客舎。旅舎。旅亭。
  • 寒灯 … 薄暗く、寒々とした灯。謝朓の「冬緒羈懐、蕭諮議虞田曹劉江二常侍に示す」(『古詩紀』巻六十九)に「寒灯宵夢をらし、清鏡暁髪を悲しむ」(寒燈耿宵夢、淸鏡悲曉髮)とある。暁髪は、白けてきた髪。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷069」参照。
  • 独不眠 … ひとり眠れないでいる。
客心何事轉悽然
客心かくしん 何事なにごとぞ うた悽然せいぜん
  • 客心 … 旅人の心。旅人の思い。ここでは作者の心を指す。
  • 何事 … どうしたことか。
  • 転 … いよいよ。ますます。
  • 悽然 … 物寂しいさま。痛ましいさま。『説文解字』巻十下、心部に「悽は、痛むなり」(悽、痛也)とある。ウィキソース「說文解字/10」参照。
  • 悽 … 『古今詩刪』では「凄」に作る。『唐詩別裁集』では「淒」に作る。いずれも同義。
故鄉今夜思千里
きょう こん せんおも
  • 故郷 … 故郷の人たち。故郷の家族たち。
  • 思千里 … (私が)故郷の人たちを千里も離れた所から思いやる。一方、「千里を思う」と読んだ場合、故郷の人たちが千里も離れた所にいる私を思っている、という解釈になる。
  • 服部南郭『唐詩選国字解』には「今夜は、除夜とて、人はみなにぎやかにたのしめども、吾れはこのやうに、千里の故郷のことを、思ひ出してかなしむ」とある。『漢籍国字解全書』第10巻(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
霜鬢明朝又一年
霜鬢そうびん 明朝みょうちょう また一年いちねん
  • 霜鬢 … 霜のような白いびん
  • 霜 … 『全唐詩』では「愁」に作り、「一作霜」とある。『唐詩品彙』では「愁」に作る。『万首唐人絶句』では「秋」に作る。
  • 鬢 … 『四部叢刊本』『唐五十家詩集本』『唐詩別裁集』では「鬂」に作る。『古今詩刪』『唐詩品彙』では「髩」に作る。いずれも異体字。
  • 明朝 … 明日の朝。
  • 又一年 … 数え年なので、一夜明けると一つ年をとる。
  • 又 … 『全唐詩』には「一作更」とある。
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