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山房春事(岑参)

山房春事
山房さんぼうしゅん
岑參しんじん
  • 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻二百一、『岑嘉州詩』巻七(『四部叢刊 初篇集部』所収)、『岑嘉州集』巻下(『前唐十二家詩』所収)、『岑嘉州集』巻八(『唐五十家詩集』所収)、『岑嘉州詩』巻八・寛保元年刊(『和刻本漢詩集成 唐詩5』所収、168頁、略称:寛保刊本)、趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十二(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)、『唐詩品彙』巻四十八、『唐詩別裁集』巻十九、他
  • 七言絶句。鴉・家・花(平声麻韻)。
  • ウィキソース「山房春事 (梁園日暮亂飛鴉)」参照。
  • 詩題 … 『全唐詩』『四部叢刊本』『前唐十二家詩本』『唐五十家詩集本』『寛保刊本』では「山房春事二首 其二」に作る。『万首唐人絶句』(嘉靖刊本)では第一首のみ収録し、第二首であるで本詩は収録していない。『万首唐人絶句』(万暦刊本)では第二首のみ収録。
  • 山房 … 山中の家。山中の庵。
  • 春事 … 春に当たって感じたこと。春景色に感じたこと。「春興」と同じ。
  • この詩は、作者が梁園の廃墟を訪れ、その春景色を見て懐古の情をおこして詠んだもの。詩題と詩の内容とが一致しない。
  • 岑参 … 715~770。盛唐の詩人。湖北省江陵の人。天宝三載(744)、進士に及第。西域の節度使の幕僚として長く辺境に勤務したのち、けつかく州長史(次官)・嘉州刺史などを歴任した。辺塞詩人として高適こうせきとともに「高岑」と並び称される。『岑嘉州集』七巻がある。ウィキペディア【岑参】参照。
梁園日暮亂飛鴉
りょうえん にち らんからす
  • 梁園 … 梁苑。漢の文帝の子、梁の孝王が築き、客を集めた庭園。兎園・修竹園ともいう。今の河南省開封市付近にあった。『元和郡県図志』河南道、宋州に「兔園、(宋城)県の東南十里」(兔園、縣東南十里)とある。ウィキソース「元和郡縣圖志/卷07」参照。また『西京雑記』巻二に「梁の孝王、宮室・苑囿えんゆうを営むの楽しみを好む。曜華の宮を作り、兎園を築く。園上に百霊山有り。山にすんせき、落猿巌、棲竜岫有り。又た雁池有り。池間に鶴洲・しょ有り。其のもろもろの宮観あいつらなり、延べ数十里に亘る。奇果・異樹、瑰禽かいきん・怪獣ことごとく備わる。王、に宮人・賓客と、其の中によくちょうす」(梁孝王好營宮室苑囿之樂。作曜華之宮、築兔園。園上有百靈山。山有膚寸石、落猿巖、棲龍岫。又有雁池。池間有鶴洲鳧渚。其諸宮觀相連、延亘數十里。奇果異樹、瑰禽怪獸畢備。王日與宮人賓客、弋釣其中)とある。苑囿は、鳥や獣を放し飼いにする庭。鳧渚は、かもの游ぶなぎさ。弋釣は、狩りや釣りをすること。ウィキソース「西京雜記/卷二」参照。
  • 日暮 … 日暮れ時。
  • 乱飛 … 乱れ飛ぶ。
  • 鴉 … からす。
極目蕭條三兩家
きょくもく蕭条しょうじょうたり さんりょう
  • 極目 … 見渡す限り。目の届く限り。『楚辞』招魂に「湛湛たんたんたる江水こうすいうえふうり。せんきわめて、しゅんしんいたましむ」(湛湛江水兮、上有楓。目極千里兮、傷春心)とある。ウィキソース「楚辭/招䰟」参照。また王粲「登楼の賦」(『文選』巻十一)に「平原へいげんとおくしてきわめ、荊山けいざん高岑こうしんおおわる」(平原遠而極目兮、蔽荊山之高岑)とある。ウィキソース「登樓賦」参照。
  • 蕭条 … 荒れ果てて物寂しいさま。『楚辞』の「遠遊」に「やま蕭条しょうじょうとしてけものく、寂漠せきばくとしてひとし」(山蕭條而無獸兮、野寂漠其無人)とある。ウィキソース「楚辭/遠遊」参照。また班固「西都の賦」(『文選』巻一)に「げん蕭条しょうじょうとして、えいきわむ」(原野蕭條、目極四裔)とある。四裔は、四方の遠い果て。ウィキソース「西都賦」参照。
  • 三両家 … 二、三軒の家。わずかな家の数をいう。三両は、二つ三つ。両三。二三。
  • 兩 … 『四部叢刊本』では「两」に作る。異体字(簡体字)。
庭樹不知人去盡
庭樹ていじゅらず ひとくすを
  • 庭樹 … 庭の木々。
  • 人去尽 … かつてここに遊んだ人が全部いなくなってしまったこと。
  • 去 … 『全唐詩』では「死」に作り、「一作去」とある。『前唐十二家詩本』『唐五十家詩集本』『寛保刊本』『万首唐人絶句』(万暦刊本)では「死」に作る。
春來還發舊時花
しゅんらい ひらく きゅうはな
  • 春来 … 春になれば。
  • 還発 … また花を咲かせる。
  • 還 … 「また」と読み、「もう一度」「再び」と訳す。「復」と同じ。中世以後の俗語。
  • 發 … 『四部叢刊本』では「落」に作る。
  • 旧時花 … 昔のままの花。
  • 庭樹~旧時花 … 劉廷芝「白頭を悲しむ翁に代る」の「年年ねんねん歳歳さいさいはなあいたり、歳歳さいさい年年ねんねんひとおなじからず」(年年歳歳花相似、歳歳年年人不同)と同意。ウィキソース「代悲白頭吟」参照。
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