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遙同蔡起居偃松篇(張説)

遙同蔡起居偃松篇はるかにさい起居ききょ偃松えんしょうへんどうず)
ちょうえつ     
  • 七言律詩。芬・羣・氳・雲・君・聞(平声文韻)。
  • この詩は本来七言十句から成るが、通行本の『唐詩選』では結聯を削って八句とし、七言律詩の中に排列している。ここでは『全唐詩』に従い結聯の二句を補った。
  • 遥同 … 蔡起居が「偃松篇」を詠じたのに対し、作者がはるか遠い岳州から唱和して作ったため。
  • 蔡起居 … 蔡は姓。起居は官名、起居郎。天子の毎日の生活を記録する官。
  • 偃松篇 … 新楽府題。「偃松」は長くのびて、地上を覆う松。
  • 張説 … 盛唐の詩人。あざなは道済。ウィキペディア【張説】参照。
清都衆木總榮芬
清都せいと衆木しゅうぼく すべ栄芬えいふんなるも
  • 清都 … 都をたたえる言葉。
  • 衆木 … 多くの樹木。朝廷の百官たちにたとえる。
  • 栄芬 … 香りのよい花が咲きにおう。
傳道孤松最出羣
伝道つたうらく 孤松こしょうもっとぐんずと
  • 伝道 … 聞くところによれば。~ということだ。
  • 孤松 … ただ一本そびえ立つ松。蔡起居にたとえる。
名接天庭長景色
天庭てんていせっして景色けいしょく
  • 名 … 松の名声。蔡起居の名声を指す。
  • 天庭 … 天帝の庭。朝廷を指す。
  • 景色 … おもむき。けしき。風情。
氣連宮闕借氛氳
宮闕きゅうけつつらなって氛氳ふんうん
  • 気 … 松の瑞気。
  • 宮闕 … 宮殿。
  • 氛氳 … 気がさかんにたちこめるさま。
懸池的的停華露
いけかか的的てきてきとして華露かろとど
  • 懸池 … 松が池の上に枝を垂れ下げている様子。
  • 的的 … ここでは露がきらきらと美しく輝くさま。
  • 華露 … 美しい露。
偃蓋重重拂瑞雲
かさ重重ちょうちょうとして瑞雲ずいうんはら
  • 偃蓋 … 木の枝がかさのように地上をおおっているさま。
  • 重重 … 幾重にもかさなっている様子。
  • 瑞雲 … めでたい雲。
不借流膏助仙鼎
流膏りゅうこう仙鼎せんていたすくるをしまず
  • 流膏 … 松の幹から流れ出るあぶら。ここでは松やにを指す。蔡起居の才能にたとえる。
  • 仙鼎 … 仙人が不老不死の薬を作るために用いるかなえ。天子の施政にたとえる。
願將楨幹捧明君
ねがわくは楨幹ていかんもっ明君めいくんささげん
  • 楨幹 … 土塀を築くときに立てる材木。転じて、物事の支柱。
  • 明君 … りっぱな君主。
莫比冥靈楚南樹
するかれ 冥霊めいれい 楚南そなんじゅ
  • 莫比 … (松の木と冥霊の木とを)比較してはなりませぬぞ。
  • 冥霊 … 伝説上の木の名。作者自身にたとえる。『列子』湯問篇に、「けいの南に冥霊という者有り、五百歳を以て春と為し、五百歳を秋と為す(荊之南有冥靈者、以五百歳爲春、五百歳爲秋)」とあるのに基づく。全文はウィキソース「列子/湯問篇」参照。
  • 楚南 … 楚国の南。
朽老江邊代不聞
江辺こうへん朽老きゅうろうしてきこえざるに
  • 朽老 … 年老いて、気力がおとろえる。老朽。
  • 江辺 … 揚子江のほとり。
  • 代不聞 … 世にその名が聞こえない。「代」は「世」に同じ。唐では太宗李世民のいみなを避けて、「世」の字はすべて「代」と書くならわしであった。ウィキペディア【太宗 (唐)】 【避諱】参照。
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