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胡笳曲(王昌齢)

胡笳曲
胡笳こかきょく
おう昌齢しょうれい
  • 五言律詩。圍・飛・微・歸(平声微韻)。
  • 胡笳曲 … 楽府題の一つ。『楽府詩集』巻五十九・琴曲歌辞に収める楽曲の名。胡笳は、胡人が用いたあしの葉を巻いた笛。物悲しい音色を出す。『文献通考』に「胡笳こか觱篥ひちりきあなく、後世こうせい鹵部ろぶこれもちう」(胡笳似觱篥而無孔、後世鹵部用之)とある。觱篥は、管楽器の一つ。竹製の縦笛で前面に七つ、裏面に二つの指孔がある。音色は鋭く、哀調を帯びる。ウィキペディア【篳篥】参照。鹵部は、大駕(天子の乗り物)の儀仗。鹵簿ろぼ(天子の行列)。ウィキソース「文獻通考 (四庫全書本)/卷138」参照。
  • この詩は、晋の将軍りゅうこんが異民族の大軍に包囲されたとき、胡笳を吹いた。その哀切な調べに敵の兵士がみな涙を流し、引き揚げていったという故事を詠んだもの。
  • 王昌齢 … 698~755。盛唐の詩人。京兆(陝西省西安市)の人。あざなは少伯。開元十五年(727)、進士に及第。秘書省の校書郎に任ぜられたが、素行が悪かったため、竜標(湖南省黔陽けんよう)の尉に左遷された。のちに安禄山の乱が起こったので故郷に逃げ帰ったが、刺史のりょ丘暁きゅうぎょうに殺されたという。李白とともに七言絶句の名手として有名。また、高適・岑参とともに辺塞詩人のひとりに数えられる。『王昌齢詩集』がある。ウィキペディア【王昌齢】参照。
城南虜已合
城南じょうなん りょすでがっ
  • 城南 … 城壁の南。
  • 虜 … 異民族の敵をののしっていうことば。胡虜。
一夜幾重圍
いち 幾重いくえにかかこ
自有金笳引
おのずから金笳きんかいん
  • 自 … こちらにはこちらで、というような意。
  • 金笳 … 金属製の胡笳。
  • 引 … 楽曲のこと。
能令出塞飛
出塞しゅっさいをしてばしむ
  • 能令出塞飛 … 出塞の調べを敵中向けて飛ばすことができる。「出塞」は楽曲の名。『全唐詩』では「能く出塞の衣をうるおす(能霑出塞衣)」に作り、「一作能令出塞飛」とある。こちらの「出塞」は楽曲のことではなく、「塞を出で遠征する」の意。
聽臨關月苦
ちょう関月かんげつのぞんで
  • 関月 … 関所の山に登る月。
  • 苦 … 冴えわたる。
清入海風微
せい海風かいふうりてかすかなり
  • 海風 … 塞外にある大きな湖から吹いてくる風。
三奏高樓曉
三奏さんそうす 高楼こうろうあかつき
  • 三奏 … 三たび奏でる。
  • 暁 … 夜明け。
胡人掩涙歸
じん なみだおおうてかえ
  • 胡人 … 北方の異民族。
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