• 〔テキスト〕 『宋本杜工部集』巻一、『杜詩詳注』巻二、『全唐詩』巻二百十六、他
• 七言古詩。驄・東・功（平声東韻）／致・至・利（去声寘韻）／鐵・裂・血（入声屑韻）／騎・知（平声支韻）／老・道（上声皓韻）、換韻。
• ウィキソース「高都護驄馬行」参照。
• 高 … 唐の武将、高（こう）仙（せん）芝（し）（？～755）のこと。ウィキペディア【高仙芝】参照。
• 都護 … 官名。西域の辺境の鎮護にあたる武官。
• 驄馬行 … 楽府題の一つ。驄馬は、黒毛と白毛の混じった葦毛の馬。行は、歌・曲の意。
• 杜甫 … 712～770。盛唐の詩人。襄（じょう）陽（よう）（湖北省）の人。字（あざな）は子美（しび）。祖父は初唐の詩人、杜審言。若い頃、科挙を受験したが及第できず、各地を放浪して李白らと親交を結んだ。安史の乱では賊軍に捕らえられたが、やがて脱出し、新帝粛（しゅく）宗（そう）のもとで左拾遺に任じられた。その翌年左遷されたため官を捨てた。四十八歳の時、成都（四川省成都市）の近くの浣（かん）花（か）渓（けい）に草堂を建てて四年ほど過ごしたが、再び各地を転々とし一生を終えた。中国最高の詩人として「詩聖」と呼ばれ、李白とともに「李杜（りと）」と並称される。『杜工部集』がある。ウィキペディア【杜甫】参照。

安西（あんせい）都護（とご）の胡（こ）青驄（せいそう）

声（せい）価（か）　欻然（くつぜん）として　来（きた）りて東（ひがし）に向（むか）う

此（こ）の馬（うま）　陣（じん）に臨（のぞ）んで久（ひさ）しく敵（てき）無（な）く

人（ひと）と心（こころ）を一（いつ）にして大功（たいこう）を成（な）せり

功（こう）成（な）って恵養（けいよう）せられて致（いた）す所（ところ）に随（したが）い

飄飄（ひょうひょう）として遠（とお）く流（りゅう）沙（さ）より至（いた）る

雄（ゆう）姿（し）　未（いま）だ受（う）けず　伏櫪（ふくれき）の恩（おん）

猛（もう）気（き）　猶（な）お思（おも）う　戦（せん）場（じょう）の利（り）

踠（あし）促（つづ）まり蹄（ひづめ）高（たか）くして鉄（てつ）を踣（ふ）むが如（ごと）く

交（こう）河（が）　幾（いく）たびか層（そう）冰（ひょう）を蹴（ふ）みて裂（さ）く

五花（ごか）は散（さん）じて雲（くも）の身（み）に満（み）つるを作（な）し

万（ばん）里（り）方（はじ）めて看（み）る　汗（あせ）の血（ち）を流（なが）すを

長（ちょう）安（あん）の壮（そう）児（じ）も敢（あ）えて騎（の）らず

走（そう）過（か）　掣電（せいでん）　城（しろ）を傾（かたむ）けて知（し）る

青（せい）糸（し）　頭（かしら）に絡（まと）いて　君（きみ）が為（ため）に老（お）ゆ

何（なに）に由（よ）ってか却（かえ）って出（い）でん　横門（こうもん）の道（みち）