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楚辞 卜居第六

九歌第二 卜居第六 漁父第七
惜誓第十一 招隠士第十二  
    
 卜居ぼくきょ第六
屈原旣放三年、不得復見。竭知盡忠、而蔽鄣於讒、心煩慮亂、不知所從。往見太卜鄭詹尹曰、余有所疑、願因先生決之。詹尹乃端策拂龜曰、君將何以教之。
屈原くつげんすでにはなたれて三年、またまみゆるを得ず。つくし、ちゅうつくして、しかもざん蔽鄣へいしょうせられ、心はわずらおもいは乱れて、したがうところを知らず。きて太卜たいぼく鄭詹尹ていせんいんを見て曰く、に疑うところあり。ねがわくは先生によりてこれを決せんことを、と。詹尹せんいんすなわちさくただはらいて曰く、君まさになにをもってこれに教えんとするや、と。
屈原曰、吾寧悃悃欵欵、朴以忠乎。
屈原曰く、われむしろ悃悃こんこん欵欵かんかんとして、朴にしてもって忠ならんか。
  • 欵欵 … 朱熹集注本では「款款」に作る。
將送往勞來、斯無窮乎。
はたおうおくらいねぎらい、ここにきわまりなからんか。
寧誅鋤草茅、以力耕乎。
むしろ草茅そうぼう誅鋤ちゅうじょして、もって力耕りょくこうせんか。
將遊大人、以成名乎。
はた大人たいじんに遊んで、もって名を成さんか。
寧正言不諱、以危身乎。
むしろ正言せいげんしてまず、もって身をあやうくせんか。
將從俗富貴、以媮生乎。
はたぞくしたがいて富貴ふうきにして、もってせいたのしまんか。
寧超然髙舉、保眞乎。
むしろ超然ちょうぜんとして高くあがり、もってしんを保たんか。
  • 以 … 四部叢刊本楚辭補注では「mojikyo_font_050083」に作る。
將哫訾栗斯、喔咿儒兒、以事婦人乎。
はた哫訾そくし栗斯りっし喔咿あくい儒兒じゅげいとして、もって婦人につかえんか。
寧廉潔正直、以自清乎。
むしろ廉潔れんけつ正直せいちょく、もってみずからきよくせんか。
將突梯滑稽、如脂如韋、以潔楹乎。
はた突梯とってい滑稽こっけいあぶらのごとくなめしがわのごとく、もって潔楹けつえいならんか。
寧昂昂若千里之駒乎。
むしろ昂昂こうこうとして、千里のこまのごとくならんか。
将氾氾、若水中之鳧乎、
はた氾氾はんぱんとして、水中ののごとく、
與波上下、偸以全吾軀乎。
波と上下して、いやしくももってわがまっとうせんか。
寧與騏驥亢軛乎。將隨駑馬之迹乎。
むしろ騏驥ききやくげんか。はた駑馬どばあとしたがわんか。
寧與黄鵠比翼乎。將與雞鶩爭食乎。
むしろ黄鵠こうこくよくならべんか。はた雞鶩けいぼくしょくを争わんか。
此孰吉孰凶。何去何從。
これいずれかきついずれかきょうならん。いずれをかりいずれにかしたがわん。
世溷濁而不清。蝉翼爲重、千鈞爲輕。
溷濁こんだくしてまず。蝉翼せんよくを重しとなし、千鈞せんきんかろしとなす。
黄鐘毀棄、瓦釜雷鳴。
黄鐘こうしょうこぼて、瓦釜がふ雷鳴らいめいす。
讒人髙張、賢士無名。
讒人ざんじん高張こうちょうし、賢士けんしは名なし。
吁嗟黙黙兮、誰知吾之廉貞。
吁嗟ああ黙黙もくもくたり。たれかわれの廉貞れんていを知らん、と。
詹尹乃釋策而謝曰、
詹尹せんいんすなわちさくててしゃして曰く、
夫尺有所短、寸有所長。
それしゃくも短きところあり、すんも長きところあり。
物有所不足、智有所不明。
物にも足らざるところあり、智にも明かならざるところあり。
數有所不逮、神有所不通。
かずおよばざるところあり、しんつうぜざるところあり。
用君之心、行君之意。
君の心を用いて、君の意をおこなえ。
龜策誠不能知事。
亀策きさくはまことにことを知るあたわず、と。