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楚辞 九歌第二

九歌第二 卜居第六 漁父第七
惜誓第十一 招隠士第十二  
    
 九歌きゅうか第二
(一)東皇太一 (二)雲中君 (三)湘君 (四)湘夫人
(五)大司命 (六)少司命 (七)東君 (八)河伯
(九)山鬼 (十)国殤 (十一)礼魂  
 (一)東皇太一
吉日兮辰良 穆將愉兮上皇
吉日きちじつしんし。つつしみてまさに上皇じょうこうなぐさめんとす。
撫長劔兮玉珥 璆鏘鳴兮琳琅
長剣ちょうけん玉珥ぎょくじすれば、璆鏘きゅうしょう琳琅りんろう鳴る。
瑶席兮玉瑱 盍將把兮瓊芳
たまむしろぎょくてん瓊芳けいほうあわり、
蕙肴蒸兮蘭藉 奠桂酒兮椒漿
蕙肴けいこうすすらんき、桂酒けいしゅ椒漿しょうしょうとをそなう。
揚枹兮拊皷 緩節兮安歌
ばちげてつづみち、せつ疏緩そかんにしてやすらかに歌う。
  • 疏 … 四部叢刊本楚辭補注では「mojikyo_font_078863」に作る。
瑟兮浩倡
竽瑟うしつつらねて浩倡こうしょうす。
  • 竽 … 四部叢刊本楚辭補注では「竿」に作るが、誤字なので改めた。
靈偃蹇兮姣服 芳菲菲兮滿堂
れい偃蹇えんけんとして姣服こうふくし、芳菲菲ほうひひとして堂に満つ。
五音紛兮繁會 君欣欣兮樂康
五音ごいんふんとして繁会はんかいすれば、きみ欣欣として楽康らくこうす。
 (二)雲中君うんちゅうくん
浴蘭湯兮沐芳 華采衣兮若英
蘭湯らんとうよくほうもくす。華采かさいはなのごとし。
靈連蜷兮既留 爛昭昭兮未央。
れい連蜷れんけんとしてすでに留まり、らんとして昭昭しょうしょうとしていまだきず。
蹇將憺兮壽宮 與日月兮齊光。
ああ、まさに寿宮じゅきゅうやすんぜんとして、日月じつげつと光をひとしくす。
龍駕兮帝服 聊翱遊兮周章。
龍駕りょうがして帝服ていふくし、しばらく翱遊こうゆうして周章しゅうしょうす。
靈皇皇兮既降 猋遠舉兮雲中。
皇皇こうこうとしてすでにくだれど、たちまち遠く雲中うんちゅうがる。
覽兾州兮有餘 横四海兮焉窮。
冀州きしゅうあまりあり、四海に横たわってなんぞきわまらん。
思夫君兮太息 極勞心兮mojikyo_font_011496mojikyo_font_011496
かのきみを思いて太息たいそくし、労心ろうしんを極めてmojikyo_font_011496mojikyo_font_011496ちゅうちゅうたり。
 (三)湘君しょうくん
君不行兮夷猶 蹇誰留兮中洲
きみ行かずして夷猶いゆうす。ああたれ中洲ちゅうしゅうとどまれる。
美要眇兮宜脩 沛吾乗兮桂舟
美しく要眇ようびょうとして宜修ぎしゅうに、はいとしてわれ桂舟けいしゅうに乗る。
令沅湘兮無波 使江水兮安流
沅湘げんしょうをして波なからしめ、江水こうすいをしてやすらかに流れしめ、
望夫君兮未來 吹參差兮誰思
かの君を望めどもいまだ来らず、参差しんしを吹いてたれをか思う。
駕飛龍兮北征 邅吾道兮洞庭
飛龍ひりょうして北にき、めぐりてわれ洞庭どうていみちす。
薜茘柏兮蕙綢 蓀橈兮蘭旌
薜茘へいれいはくけいちゅうそんかじらんはた
望涔陽兮極浦 横大江兮揚靈
涔陽しんよう極浦きょくほを望み、大江たいこうに横たわって霊をぐ。
揚靈兮未極 女嬋媛兮爲余太息
霊を揚げていまだ極まらず、じょ嬋媛せんえんとしてがために太息たいそくす。
横流涕兮潺湲 隱思君兮陫側
なみだ横流おうりゅうして潺湲せんかんたり、君を隠思いんしして陫側ふっそくたり。
桂櫂兮蘭枻 斲冰兮積雪
かつらかいらんかじ。氷をり、雪をむ。
采薜茘兮水中 搴芙蓉兮木末
薜茘へいれいを水中にり、芙蓉ふよう木末こずえるごとく、
心不同兮媒勞 恩不甚兮輕絶
こころ同じからざれば媒労ばいろうし、恩はなはだしからざれば軽くゆ。
石瀬兮淺淺 飛龍兮翩翩
石瀬せきらい浅浅せんせんたり、飛龍ひりょう翩翩へんぺんたり。
交不忠兮怨長 期不信兮告余以不閒
まじわりちゅうならずしてうらみ長く、まことならずしてぐるにいとまあらざるをもってす。
鼂騁騖兮江皐 夕弭節兮北渚
あした江皐こうこう騁騖ていぶして、ゆうべせつ北渚ほくしょとどむれば、
鳥次兮屋上 水周兮堂下
鳥は屋上にやどり、水は堂下どうかめぐる。
捐余玦兮江中 余佩兮醴浦
けつ江中こうちゅうて、余がはい醴浦れいほて、
  • 遺 … 四部叢刊本楚辭補注では脱字のため補った。
采芳洲兮杜若 將以遺兮下女
芳洲ほうしゅう杜若とじゃくり、まさにもって下女かじょおくらんとす。
峕不可兮再得 聊逍遥兮容與
時は再びべからず。しばら逍遥しょうようして容与ようよせん。
 (四)湘夫人しょうふじん
帝子降兮北渚 目眇眇兮愁予
帝子ていし北渚ほくしょくだる。目眇眇びょうびょうとしてうれえしむ。
嫋嫋兮秋風 洞庭波兮木葉下
嫋嫋じょうじょうたる秋風しゅうふう洞庭どうていなみだって木葉もくようくだる。
白薠兮騁望 與佳期兮夕張
白薠はくへんに登りてのぞみせ、佳期かきをともにせんとしてゆうべる。
  • 登 … 四部叢刊本楚辭補注には存在しないが補った。
萃兮蘋中 罾何爲兮木上
鳥なんぞひんの中にあつまれる。あみなんぞ木の上になせる。
  • 何 … 四部叢刊本楚辭補注には存在しないが補った。
沅有茞兮醴有蘭 思公子兮未敢言
げんあり、れいらんあり。公子こうしを思いていまだあえて言わず。
荒忽兮遠望 觀流水兮潺湲
荒忽こうこつとして遠く望み、流水の潺湲せんかんたるをる。
麋何食兮庭中 蛟何爲兮水裔
なんぞ庭中ていちゅうくらい、こう何をか水裔すいえいになす。
朝馳余馬兮江皐 夕濟兮西澨
あしたが馬を江皐こうこうせてゆうべ西澨せいぜいわたる。
聞佳人兮召予 將騰駕兮偕逝
佳人かじんすと聞き、まさに騰駕とうがしてともかんとす。
築室兮水中 葺之兮荷蓋
しつを水中にきずき、これをきてもておおう。
蓀壁兮紫壇 芳椒兮成堂
そんの壁、紫のだん芳椒ほうしょういて堂を成す。
  • 播 … 四部叢刊本楚辭補注では「」に作るが、正しくは「mojikyo_font_040117」。「播」の古字。
桂棟兮蘭橑 辛夷楣兮葯房
かつらむねらんたるき辛夷しんいやくぼう
罔薜茘兮爲帷 擗蕙櫋兮既張
薜茘へいれいみてとなし、けいいてめんとしすでにる。
兮爲鎭 疏石蘭兮爲芳
白玉はくぎょくちんとなし、石蘭せきらんいてほうとなし、
  • 玉 … 四部叢刊本楚辭補注では「王」に作るが改めた。
芷葺兮荷屋 繚之兮杜衡
もて荷屋かおくき、これに杜衡とこうめぐらす。
合百草兮實庭 建芳馨兮廡門
百草ひゃくそうを合せてていたし、芳馨ほうけいんで門をおおう。
九嶷繽兮並迎 靈之來兮如雲
九嶷きゅうぎひんとして並び迎え、霊のきたること雲のごとし。
捐余袂兮江中 遺余褋兮醴浦
へい江中こうちゅうて、余がちょう醴浦れいほて、
搴汀洲兮杜若 將以遺兮遠者
汀洲ていしゅう杜若とじゃくり、まさにもって遠き者におくらんとす。
時不可兮驟得 聊逍遥兮容與
時はしばしばべからず。しばら逍遥しょうようして容与ようよせん。
 (五)大司命だいしめい
廣開兮天門 紛吾乗兮玄雲
広く天門てんもんを開き、ふんとしてわれ玄雲げんうんに乗る。
令飄風兮先驅 使涷雨兮灑塵
飄風ひょうふうをして先驅せんくせしめ、涷雨とううをしてちりそそがしむ。
君廻翔兮以下 踰空桑兮從女
きみ廻翔かいしょうしてもってくだれば、空桑くうそうえてなんじに従わん。
紛總總兮九州 何壽夭兮在予
ふんとして総総そうそうたる九州、なんぞ寿夭じゅようの予に在る。
高飛兮安翔 乗清氣兮御陰陽
高く飛び、やすらかにかけり、清気せいきに乗りて陰陽いんようぎょす。
吾與君兮齋速 導帝之兮九坑
われときみ斎速せいそくに、ていみちびいて九坑きゅうこうかん。
靈衣兮被被 玉佩兮陸離
霊衣れいい被被ひひたり、玉佩ぎょくはい陸離りくりたり。
壹陰兮壹陽 衆莫知兮余所爲
壱陰いちいん壱陽いちようしゅうがなすところを知るなし。
麻兮瑶華 將以遺兮離居
疏麻そま瑶華ようかを折り、まさにもって離れ居るものにおくらんとす。
  • 疏 … 四部叢刊本楚辭補注では「mojikyo_font_078863」に作る。
老冉冉兮既極 不寖近兮愈
おい冉冉ぜんぜんとしてすでに極まるに、ようやく近づかずしていよいよとおざかる。
  • 疏 … 四部叢刊本楚辭補注では「mojikyo_font_078863」に作る。
乗龍兮轔轔 髙駝兮沖天
りょうに乗りて轔轔りんりんと、高くせて天にちゅうし、
結桂枝兮延竚 羌愈思兮愁人
桂枝けいしむすんで延竚えんちょすれど、ああ、いよいよ思いて人をしてうれえしむ。
愁人兮柰何 願若今兮無虧
人をうれえしむるを柰何いかんせん。願わくは今のくるなきがごとくならんことを。
固人命兮有當 孰離合兮可爲
もとより人のいのちには当ることあり、たれ離合りごうをなすべけん。
 (六)少司命しょうしめい
秋蘭兮麋蕪 羅生兮堂下
秋蘭しゅうらん麋蕪びぶと、堂下どうか羅生らせいす。
緑葉兮素枝 芳菲菲兮襲予
緑葉りょくよう素枝そし芳菲菲ほうひひとして予をおそう。
夫人自有兮美子 蓀何以兮愁苦
それ人にはおのずから美子びしあり、そん何をもって愁苦しゅうくする。
秋蘭兮青青 緑葉兮紫莖
秋蘭しゅうらん青青せいせいたり、緑葉りょくよう紫茎しけいと、
滿堂兮美人 忽獨與余兮目成
満堂まんどうの美人、たちまちひと目成もくせいす。
入不言兮出不辭 乗回風兮載雲旗
るにものいわず、ずるにせず、回風かいふうに乗りて雲旗うんきつ。
悲莫悲兮生別離 樂莫樂兮新相知
悲しきは生別離せいべつりより悲しきはなく、楽しきは新相知しんそうちより楽しきはなし。
荷衣兮蕙帶 儵而來兮忽而逝
ころもけいおびしゅくとしてきたり、こつとしてく。
夕宿兮帝郊 君誰須兮雲之際
ゆうべていこう宿やどれば、きみたれをかくもはてつ。
與女遊兮九河 衝風至兮水揚波
なんじ九河きゅうかに遊べば、衝風しょうふういたって水なみぐ。
  • この二句は古本になく、王逸の注もない。補注では「この二句は『河伯』章中の語なり」という。
與女沐兮咸池 晞女髮兮陽之阿
なんじ咸池かんちもくし、なんじの髪をようかわかさん。
望美人兮未來 臨風怳兮浩歌
美人を望めどもいまだ来らず、風にのぞんでこうとして浩歌こうかす。
孔蓋兮翠旍 登九天兮撫彗星
孔蓋こうがい翠旍すいせいと、九天きゅうてんに登って彗星すいせいす。
竦長劔兮擁幼艾 蓀獨冝兮爲民正
長剣ちょうけんりて幼艾ようがいようす。そんひとよろしくたみせいたるべし。
 (七)東君とうくん
暾將出兮東方 照吾檻兮扶桑
とんとしてまさに東方とうほうでんとして、わがかん扶桑ふそうに照らす。
撫余馬兮安驅 夜皎皎兮既明
が馬をしてしずかくれば、皎皎こうこうとしてすでにく。
駕龍輈兮乗雷 載雲旗兮委蛇
龍輈りょうちゅうしてらいに乗り、雲旗うんきてて委蛇いいたり。
長太息兮將上 心低佪兮顧懷
長太息ちょうたいそくしてまさにのぼらんとすれど、心は低佪ていかいしてかえりおもう。
羌聲色兮娯人 觀者憺兮忘歸
ああ声色せいしょくの人をたのしましむる、る者たんとして帰るをわする。
緪瑟兮交鼓 簫鍾兮瑶簴
緪瑟こうしつ交鼓こうこと、しょう瑶簴ようきょつ。
mojikyo_font_048898兮吹竽 思靈保兮賢姱
mojikyo_font_048898めいち吹竽すいうと、霊保れいほ賢姱けんこなるを思う。
翾飛兮翠曽 展詩兮會舞
翾飛けんぴして翠曽すいそうし、詩をべて会舞かいぶす。
應律兮合節 靈之來兮蔽日
りつおうじてせつがっすれば、霊のきたること日をおおう。
青雲衣兮白霓裳 舉長矢兮射天狼
青雲せいうん白霓はくげいしょう長矢ちょうしげて天狼てんろうる。
操余弧兮反淪降 援北斗兮酌桂漿
りてかえりて淪降りんこうし、北斗ほくとりて桂漿けいしょうむ。
撰余轡兮髙翔 杳冥冥兮以東行
たづなちて高く駝翔ちしょうし、ようとして冥冥めいめいとしてもって東に行く。
  • 駝 … 「馳」に同じ。
 (八)河伯かはく
與女遊兮九河 衝風起兮横波
なんじ九河きゅうかに遊べば、衝風しょうふう起って波をよこたう。
乗水車兮荷蓋 駕兩龍兮驂螭
水車すいしゃに乗りてがいし、両龍りょうりゅうしてさんとす。
登崑崙兮四望 心飛揚兮浩蕩
崑崙こんろんに登ってもを望めば、心は飛揚ひようして浩蕩こうとうたり。
日將暮兮悵忘歸 惟極浦兮寤懷
まさにれんとしてちょうとして帰るを忘れ、ただ極浦きょくほめておもう。
魚鱗屋兮龍堂 紫貝闕兮朱宮
魚鱗ぎょりんおくりゅうどうと、紫貝しばいけつ朱宮しゅきゅうと。
靈何爲兮水中 乗白黿兮逐文魚
れいなんすれぞ水中なる。白黿はくげんに乗りて文魚ぶんぎょい、
與女遊兮河之渚 流澌紛兮將來下
なんじなぎさに遊べば、流澌りゅうしふんとしてまさにきたくだらんとす。
子交手兮東行 送美人兮南浦
と手をまじえて東行とうこうし、美人びじん南浦なんぽに送れば、
波滔滔兮來迎 魚隣隣兮媵予
波は滔滔とうとうとしてきたむかえ、うお隣隣りんりんとしてしたがう。
 (九)山鬼さんき
若有人兮山之阿 被薜茘兮帶女羅
ここに人あり山のくまに、薜茘へいれい女羅じょらおびとす。
旣含睇兮又冝笑 子慕予兮善窈窕
すでにていを含みてまたよく笑う。のよく窈窕ようちょうたるをしたう。
乗赤豹兮從文狸 辛夷車兮結桂旗
赤豹せきひょうに乗りて文狸ぶんりしたがえ、辛夷しんいの車にかつらの旗を結び、
被石蘭兮帶杜衡 折芳馨兮遺所思
石蘭せきらん杜衡とこうおびとし、芳馨ほうけいを折りて思うところにおくる。
余處幽篁兮終不見天 路險難兮獨後來
幽篁ゆうこうにおりてついに天を見ず、みち険難けんなんにしてひとり後れてきたる。
表獨立兮山之上 雲容容兮而在下
たかくひとり山の上に立てば、雲容容ようようとしてしたにあり。
杳冥冥兮羌晝晦 東風飄兮神靈雨
ようとして冥冥めいめいとして、ああ、昼くらく、東風とうふうひょうとして神霊しんれい雨ふらす。
留靈脩兮憺忘歸 歳旣晏兮孰華予
霊脩れいしゅうとどめてたんとして帰るを忘れしめん。としすでにおそければ、たれかはなさかせん。
采三秀兮於山閒 石磊磊兮葛蔓蔓
三秀さんしゅう山間さんかんるに、いし磊磊らいらいとしてかずら蔓蔓まんまんたり。
怨公子兮悵忘歸 君思我兮不得閒
公子こうしうらんでちょうとして帰るを忘る。きみわれを思いてかんざるならん。
山中人兮芳杜若 飲石泉兮蔭松栢
山中さんちゅうの人は杜若とじゃくかんばしく、石泉せきせんを飲みて松柏しょうはくおおわる。
君思我兮然疑作
きみわれを思いて然疑ぜんぎおこりしならん。
塡塡兮雨冥冥 猨啾啾兮又夜鳴
らい填填てんてんとしてあめ冥冥めいめいたり。えん啾啾しゅうしゅうとしてまたよるく。
  • 雷 … 四部叢刊本楚辭補注では「靁」に作る。
風颯颯兮木蕭蕭 思公子兮徒離憂
かぜ颯颯さっさつとして蕭蕭しょうしょうたり。公子こうしを思えばいたずらにうれいにかかるのみ。
 (十)国殤こくしょう
操呉戈兮被犀甲 車錯轂兮短兵接
呉戈ごかりて犀甲さいこうこうむり、車はこくまじえて短兵たんぺいせっす。
旌蔽日兮敵若雲 矢交墜兮士爭先
はたは日をおおいて敵は雲のごとく、矢はこもごもちてさきあらそう。
凌余陣兮躐余行 左驂殪兮右刃傷
じんしのぎてこうみ、左驂ささんたおれてみぎじんきずつく。
霾兩輪兮縶四馬 援玉枹兮撃鳴鼓
両輪りょうりんうずみて四馬しばつなぎ、玉枹ぎょくほうりて鳴鼓めいこつ。
天時兮威靈怒 嚴殺盡兮棄原
てんときちて威霊いれいいかり、厳殺げんさつつくして原野げんやつ。
  • 墜 … 朱熹集注本では「懟」に作る。
  • 野 … 四部叢刊本楚辭補注では「壄」に作る。
出不入兮往不反 平原忽兮路超遠
でてらず、きてかえらず、平原へいげんこつとしてみち超遠ちょうえんなり。
帶長劔兮挾秦弓 首身離兮心不懲
長剣ちょうけんびて秦弓しんきゅうさしはさみ、首身しゅしんはなるともこころりず。
誠旣勇兮又以武 終剛強兮不可凌
まことにすでにいさんでまたもってたけく、ついに剛強ごうきょうにしてしのぐべからず。
身旣死兮神以靈 子魂魄兮爲鬼雄
すでに死すれどもしんもってれいに、魂魄こんぱく鬼雄きゆうとなる。
 (十一)礼魂れいこん
成禮兮會皷 傳芭兮代舞
礼を成してつづみかいし、を伝えてかわがわる舞う。
姱女倡兮容與
姱女かじょ うたいて容与ようよたり。
春蘭兮秋菊 長無絶兮終古。
春蘭しゅんらん秋菊しゅうきくと、長くゆることなく終古しゅうこならん。