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湘南即事(戴叔倫)

湘南即事
しょうなんそく
たいしゅくりん
  • 〔テキスト〕 『三体詩』七言絶句・実接、『全唐詩』巻二百七十四、『戴叔倫集』巻下(『唐五十家詩集』所収)、『唐詩品彙』巻五十、趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十四(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)、『唐詩別裁集』巻二十、『唐人万首絶句選』巻四、他
  • 七言絶句。衰・師・時(平声支韻)。
  • ウィキソース「湘南即事」参照。
  • 湘南 … 湘江(湘水)の南の地方。湘江は広西チワン族自治区に発して湖南省を北上し、しょうすいと合流して洞庭湖に注ぐ川。ウィキペディア【湘江】参照。
  • 即事 … 目の前の情景や事柄に即して、見たままに詠じたもの。
  • 戴叔倫 … 732~789。中唐の詩人。あざな幼公ようこう潤州じゅんしゅう金壇きんだん(江蘇省金壇区)の人。若い時、しょうえいに師事した。撫州(江西省撫州市)刺吏・容管(広西チワン族自治区容県)経略使を歴任した。晩年は辞職して道士となったが、ほどなく死んだ。『戴叔倫詩集』二巻がある。ウィキペディア【戴叔倫】参照。
盧橘花開楓葉衰
きつ はなひらいて 楓葉ふうようおとろ
  • 盧橘 … 柑橘類の一種。金柑とも、びわとも言われており、諸説ある。
  • 楓葉 … 唐かえでの葉。『唐五十家詩集本』では「飄葉ひょうよう」に作る。こちらは「ひらひらとひるがえる葉」という意味になる。
  • 衰 … 色褪せて散っていく。
出門何處望京師
もんでて いずれのところにか けいのぞまん
  • 何処 … 「いずれのところにか」と読む。場所を聞く疑問詞。「~する場所はどこにもない」という反語の意。
  • 京師 … 天子のいる都。長安のこと。京洛・京兆・京城・京都みな同じ。
沅湘日夜東流去
げんしょう にち ひがしなが
  • 沅湘 … 沅江(沅水)と湘江(湘水)。どちらも洞庭湖に注ぐ。
  • 日夜 … 昼も夜も。
  • 流 … 『全唐詩』には「一作歸」とある。
不爲愁人住少時
しゅうじんためとどまること 少時しばらくもせず
  • 愁人 … 心にうれいを抱く人。作者自身を指す。
  • 住 … とどまる。やめる。「不住少時」で、川の流れがしばしの間もとどまることがない、という意味になる。
  • 少時 … 「しばし」とも読む。
余説
『徒然草』第二十一段に、この詩の転・結句が引用されている。
 月・花はさらなり、風のみこそ、人に心はつくめれ。岩に砕けて清く流るゝ水のけしきこそ、時をもわかずめでたけれ。「げんしやう、日夜ひんがしに流れ去る。愁人しうじんのために止まること少時しばらくもせず」といへる詩を見侍りしこそ、あはれなりしか。
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