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暮立(白居易)

暮立
くれ
はくきょ
  • 〔テキスト〕 『白氏文集』巻十四(『四部叢刊 初編集部』所収、通称:四部叢刊本・那波本)、『白氏文集』巻十四(南宋紹興刊本、通称:紹興本)、『白氏文集』巻十四(明馬元調校刊本、通称:馬本)、『白香山詩集』巻十四(清汪立名編訂本、通称:汪本)、『全唐詩』巻四百三十七、他
  • 七言絶句。前・蟬・天(平声先韻)。
  • ウィキソース「暮立」参照。
  • 暮立 … 秋の夕暮れに一人たたずむ。白居易四十歳、母を亡くし、郷里のけい(陝西省なん)に帰って喪に服していたときの作。
  • 白居易 … 772~846。中唐の詩人。あざなは楽天、号は香山居士。貞元十六年(800)、進士に及第。翰林学士、左拾遺などを歴任後、江州(江西省九江)司馬に左遷された。のち中央に復帰し、最後は刑部尚書の肩書で退官した。詩風は平易を第一とした。詩文集『はくもんじゅう』は平安時代に我が国へ伝えられ、日本文学に多大な影響を与えた。ウィキペディア【白居易】参照。
黄昏獨立佛堂前
黄昏こうこん ひと仏堂ぶつどうまえ
  • 黄昏 … たそがれ。
  • 仏堂 … 寺院のお堂。
滿地槐花滿樹蟬
つるかい つるせみ
  • 満地 … 地面いっぱいを埋め尽くしている。
  • 槐花 … (舞い散った)えんじゅの花。
  • 満樹蟬 … 木々に蟬が鳴きしきる。
大抵四時心總苦
大抵たいていしい こころべてくるしけれど
  • 大抵 … おおよそ。おおむね。
  • 四時 … 「しいじ」と読む。「しじ」の延音。四季。春夏秋冬。『論語』陽貨篇に「四時しじおこなわれ、ひゃくぶつしょうず」(四時行焉、百物生焉)とある。ウィキペディア【論語/陽貨第十七】参照。
  • 総 … いつも。『那波本』では「揔」に作る。同義。
  • 苦 … つらく悲しい。
就中腸斷是秋天
就中なかんずく はらわたたれるは しゅうてん
  • 就中 … とりわけ。
  • 腸断 … はらわたがちぎれるほどに悲しい。「断腸」と同義。
  • 是 … ~である。
  • 秋天 … 秋の空。秋の時節。
余説
 この詩の転・結句は『和漢朗詠集』巻上、秋、秋興の部に引かれている。なお、『古今和歌集』の「いつはとは時はわかねど秋のよぞ物思ふことのかぎりなりける」(巻四、秋歌上)、「いつとても恋しからずはあらねども秋の夕べはあやしかりけり」(巻十一、恋歌一)などはこれに基づく。
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