六韜 順啓第十六
文王問太公曰、何如而可爲天下。太公曰、大蓋天下、然後能容天下。信蓋天下、然後能約天下。仁蓋天下、然後能懷天下。恩蓋天下、然後能保天下。權蓋天下、然後能不失天下。事而不疑、則天運不能移、時變不能遷。此六者備、然後可以爲天下政。
文王、太公に問うて曰く、「いかにしてもって天下を為むべき」。太公曰く、「大、天下を蓋いて、しかるのちによく天下を容る。信、天下を蓋いて、しかるのちによく天下を約す。仁、天下を蓋いて、しかるのちによく天下を懐く。恩、天下を蓋いて、しかるのちによく天下を保つ。権、天下を蓋いて、しかるのちによく天下を失わず。事ありて疑わざれば、すなわち天運も移すあたわず、時変も遷すあたわず。この六つのもの備わりて、しかるのちにもって天下の政をなすべし。
故利天下者、天下啓之、害天下者、天下閉之。生天下者、天下徳之。殺天下者、天下賊之。徹天下者、天下通之、窮天下者、天下仇之。安天下者、天下恃之、危天下者、天下災之。天下者非一人之天下、唯有道者處之。
ゆえに天下を利する者は、天下これを啓き、天下を害する者は、天下これを閉ざす。天下を生かす者は、天下これを徳とし、天下を殺す者は、天下これを賊とす。天下を徹する者は、天下これを通じ、天下を窮する者は、天下これを仇とす。天下を安んずる者は、天下これを恃み、天下を危うくする者は、天下これを災とす。天下は一人の天下にあらず、ただ有道の者のみこれに処る」。