死せる孔明生ける仲達を走らす
死せる孔明生ける仲達を走らす
- 〔出典〕 『蜀志』諸葛亮伝・注、『十八史略』巻三・三国
- 〔解釈〕 中国の三国時代、蜀の諸葛孔明が魏の司馬仲達と五丈原で対陣中に病死したため、軍をまとめて帰ろうとした蜀軍を仲達はただちに追撃したが、蜀軍は孔明の遺命に基づいて反撃の構えを示したため、仲達は孔明がまだ死んでおらず、何か策略があるのだろうと勘ぐり退却したという故事。生前の威光が死後も残っており、人々を畏怖させるたとえ。(Yahoo!辞書 大辞泉 【死せる孔明生ける仲達を走らす】)
〔十八史略、三国〕
亮數挑懿戰。懿不出。乃遺以巾幗婦人之服。亮使者至懿軍。懿問其寢食及事煩簡、而不及戎事。使者曰、諸葛公夙興夜寐、罰二十以上皆親覽。所噉食、不至數升。懿告人曰、食少事煩、其能久乎。
亮、数々懿に戦いを挑む。懿、出でず。乃ち遺るに巾幗婦人の服を以てす。亮の使者、懿の軍に至る。懿、其の寝食及び事の煩簡を問うて、戎事に及ばず。使者曰く、諸葛公、夙に興き、夜に寐ね、罰二十以上は皆親ら覧る。噉食する所は、数升に至らず、と。懿、人に告げて曰く、食少なく事煩わし、其れ能く久しからんや、と。
- 亮 … 三国時代、蜀の忠臣。姓は「諸葛」、諱は「亮」、字は「孔明」。
- 懿 … 三国時代、魏の権臣。姓は「司馬」、諱は「懿」、字は「仲達」。
- 巾幗 … 女性が頭を包む布。転じて、女性のこと。
- 煩簡 … 忙しいことと暇なこと。
- 戎事 … 軍事。
- 夙興夜寐 … 朝は早くから起き、夜は遅くなってから休む。日夜、政務に励むこと。『詩経』から。
- 罰二十 … 杖で二十打つ軽い刑罰。
- 噉食 … 噉は啖に同じ。がつがつ食う、の意であるが、ここでは単に食うこと。
- 数升 … わが国の3、4合程度。
亮病篤。有大星、赤而芒、墜亮營中。未幾亮卒。長史楊儀整軍還。百姓奔告懿。懿追之。姜維令儀反旗鳴鼓、若將向懿。懿不敢逼。百姓爲之諺曰、死諸葛、走生仲達。懿笑曰、吾能料生、不能料死。
亮、病篤し。大星有り、赤くして芒あり、亮の営中に墜つ。未だ幾ならずして亮卒す。長史楊儀、軍を整えて還る。百姓奔って懿に告ぐ。懿之を追う。姜維、儀をして旗を反し鼓を鳴らし、将に懿に向わんとするが若くせしむ。敢えて逼らず。百姓之が為に諺して曰く、死せる諸葛、生ける仲達を走らしむ、と。懿笑って曰く、吾能く生を料れども、死を料ること能わず、と。
- 芒 … 光の尾。
- 卒 … 身分のある人が死ぬ。
- 長史 … 官名。
- 楊儀 … 三国時代、蜀の忠臣。字は威公。
- 姜維 … 三国時代、蜀の将軍。字は伯約。