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杯中の蛇影

はいちゅうえい
  • 出典:『晋書』楽広伝(ウィキソース「晉書/卷043」参照)、『風俗通義』怪神(ウィキソース「風俗通義/9」参照)、『蒙求』広客蛇影
  • 解釈:何でもないことに対し、気にして疑い深くなり、神経を悩まし苦しむこと。河南の長官楽広の友人が楽広に酒を勧められた。友人がそれを飲もうとしたとき、杯の中に蛇が見えて気持ち悪くなったが、我慢して飲んだら病気になってしまった。のちに楽広からそれは蛇ではなく壁にかけてある弓であることを聞き、病気がすっかり治ったという話から。
  • 晋書 … 二十四史の一つ。帝紀十巻、志二十巻、列伝七十巻、載記(五胡十六国の歴史)三十巻の全百三十巻。唐の房玄齢・李延寿らの編。貞観二十二年(648)頃成立。ウィキペディア【晋書】参照。
〔晋書、楽広伝〕
樂廣、字彥輔、南陽淯陽人也。
楽広がくこうあざなげん南陽なんよう淯陽いくようひとなり。
  • 楽広 … 晋の政治家。?~304。あざなは彦輔。南陽郡淯陽の人。官は尚書令に至る。ウィキペディア【樂廣】(中文)参照。
……嘗有親客、久闊不復來。廣問其故。答曰、前在坐、蒙賜酒、方欲飮、見杯中有蛇。意甚惡之、既飮而疾。
……かつ親客しんかくるも、きゅうかつしてきたらず。こうゆえう。こたえていわく、まえりて、さけたまわるをこうむり、まさまんとほっして、はいちゅうへびるをる。はなはこれにくむも、すでみてめり、と。
  • 親客 … 親しい賓客。
  • 久闊 … 久しぶり。
  • 疾 … 病気になってしまった。
於時河南聽事壁上有角、漆畫作蛇。廣意、杯中蛇即角影也。復置酒於前處、謂客曰、酒中復有所見不。答曰、所見如初。廣乃告其所以。客豁然意解、沈痾頓愈。
ときなんちょうへきじょうつのり、しつもてえがへびす。こうおもえらく、はいちゅうへびすなわ角影かくえいなり、と。さけ前処ぜんしょきて、かくいていわく、しゅちゅうところりやいなや、と。こたえていわく、ところはじめのごとし、と。こうすなわ所以ゆえんぐ。かく豁然かつぜんとしてけ、ちんとみゆ。
  • 聴事 … 訴訟を受け付ける役所。
  • 角 … かっきゅうはずつので固めて強くした弓)を指す。
  • 豁然 … 疑いや迷いが急に消え去り、物事がはっきりするさま。
  • 沈痾 … 長い間治らない病気。
  • 頓 … にわかに。たちまち。
  • 愈 … 治ってしまった。
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