蛇足

蛇（だ）足（そく）

出典：『戦国策』斉（ウィキソース「戰國策 (鮑彪注, 四庫全書本)/卷04」参照）
解釈：よけいなもの。必要のないもの。昔、楚の国で蛇の絵を早く描く競争をしたところ、先に描き上げた者が足まで描いたため他の者に負けてしまい、酒を飲みそこなったという故事から。

戦国策 … 漢の劉向（りゅうきょう）（前77～前6）の編。戦国時代の各国の出来事や、諸国を遊説（ゆうぜい）した縦（じゅう）横（おう）家（か）（ショウオウカとも）の策謀を国別に集めたもの。テキストには姚氏三十三巻本と鮑氏十巻本との二種類がある。ウィキペディア【戦国策】参照。

〔閔王、昭陽爲楚伐魏〕
楚有祠者。

楚（そ）に祠（まつ）る者（もの）有（あ）り。

賜其舎人巵酒。

其（そ）の舎人（しゃじん）に巵（し）酒（しゅ）を賜（たま）う。

舎人相謂曰、

舎人（しゃじん）相（あい）謂（い）いて曰（いわ）く、

數人飮之不足、一人飮之有餘。

数人（すうにん）之（これ）を飲（の）めば足（た）らず、一人（いちにん）之（これ）を飲（の）めば余（あま）り有（あ）り。

請畫地爲蛇、先成者飮酒。

請（こ）う地（ち）に画（えが）きて蛇（へび）を為（つく）り、先（ま）ず成（な）る者（もの）酒（さけ）を飲（の）まん、と。

一人蛇先成。

一人（いちにん）の蛇（へび）先（ま）ず成（な）る。

引酒且飮之。

酒（さけ）を引（ひ）きて且（まさ）に之（これ）を飲（の）まんとす。

乃左手持巵、右手畫蛇曰、

乃（すなわ）ち左（さ）手（しゅ）に巵（し）を持（も）ち、右手（ゆうしゅ）に蛇（へび）を画（えが）きて曰（いわ）く、

吾能爲之足。

吾（われ）能（よ）く之（これ）が足（あし）を為（つく）る、と。

未成、一人之蛇成。

未（いま）だ成（な）らざるに、一人（いちにん）の蛇（へび）成（な）る。

奪其巵曰、蛇固無足。

其（そ）の巵（し）を奪（うば）って曰（いわ）く、蛇（へび）は固（もと）より足（あし）無（な）し。

子安能爲之足。

子（し）安（いず）くんぞ能（よ）く之（これ）が足（あし）を為（つく）らん、と。

遂飮其酒。

遂（つい）に其（そ）の酒（さけ）を飲（の）む。

爲蛇足者、終亡其酒。

蛇（へび）の足（あし）を為（な）す者（もの）、終（つい）に其（そ）の酒（さけ）を亡（うしな）えり。

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