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子張第十九 14 子游曰喪致乎哀而止章

485(19-14)
子游曰、喪致乎哀而止。
ゆういわく、あいいたしてむ。
現代語訳
  • 子游 ――「とむらいは、心から悲しめたらそれでよい。」(がえり善雄『論語新訳』)
  • 子游の言うよう、「父母の喪は結局あいの真情をつくすだけのことで、それ以上の虚礼きょれいはいらぬ。」(穂積重遠しげとお『新訳論語』)
  • 子游がいった。――
    「喪にあたっては、哀悼の至情をつくせばそれでいいので、形式をかざる必要はない」(下村湖人『現代訳論語』)
語釈
  • 子游 … 前506~前443?。姓はげん、名はえん、子游はあざな。呉の人。孔門十哲のひとり。「文学には子游・子夏」といわれ、子夏とともに文章・学問に優れているとされた。武城の町の宰(長官)となった。ウィキペディア【子游】参照。
  • 喪 … 葬式や喪中(喪に服している期間)の礼法。
  • 哀 … 悲しみ。
  • 致 … 極める。極め尽くす。ここでは、この上なく悲しむこと。
補説
  • 『注疏』に「此の章は居喪の礼を言うなり」(此章言居喪之禮也)とある。『論語注疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 子游 … 『孔子家語』七十二弟子解に「言偃げんえんひとあざなは子游。孔子よりわかきこと三十五歳。時に礼を習い、文学を以て名を著す。仕えて武城の宰と為る。嘗て孔子に従いて衛にく。将軍の子蘭と相善し。之をして学を夫子に受けしむ」(言偃魯人、字子游。少孔子三十五歳。時習於禮、以文學著名。仕爲武城宰。嘗從孔子適衞。與將軍之子蘭相善。使之受學於夫子)とある。ウィキソース「家語 (四庫全書本)/卷09」参照。また『史記』仲尼弟子列伝に「言偃はひとあざなは子游。孔子よりわかきこと四十五歳」(言偃呉人。字子游。少孔子四十五歳)とある。ウィキソース「史記/卷067」参照。
  • 喪致乎哀而止 … 『集解』に引く孔安国の注に「こぼつも性をうしなわざるなり」(毀不滅性也)とある(『孝経』喪親章)。なお、底本では「滅」を「傷」に作るが、諸本に従い改めた。『論語集解』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『義疏』に「致は、猶お至のごときなり。喪礼は哀を主とすと雖も、然れども孝子は哀に過ぎて以て性をうしなうを得ず。故に各〻をして哀を至極せしめて止むなり」(致、猶至也。雖喪禮主哀、然孝子不得過哀以滅性。故使各至極哀而止也)とある。『論語義疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『注疏』に「言うこころは人に父母の喪有れば、当に哀慼を致極するも、毀つを過ぎて以て性を滅ぼすに至るを得ざるべし。性を滅ぼすは則ち孝に非ず」(言人有父母之喪、當致極哀慼、不得過毀以至滅性。滅性則非孝)とある。また『集注』に「其の哀を致し極め、文飾を尚ばざるなり」(致極其哀、不尚文飾也)とある。『論語集注』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 『集注』に引く楊時の注に「喪は其のおさめんよりはむしいためよ(八佾第三4)と、礼足らずして哀しみ余り有るに若かずとの意なり」(喪與其易也寧戚、不若禮不足而哀有餘之意)とある。
  • 『集注』に「愚按ずるに、而止の二字、亦た微かに高遠に過ぎて、細微を簡略するの弊有り。学者之を詳らかにすべし」(愚按、而止二字、亦微有過於高遠而簡略細微之弊。學者詳之)とある。
  • 伊藤仁斎『論語古義』に「此れぞく喪に居る者、哀足らずして専ら文を務むるを戒むるなり。即ち喪は其のおさめんよりは、寧ろいためよ、喪は其の哀足らずして、礼余り有らんよりは、礼足らずして哀余り有るには若かずの意なり。聖門の学、実を尚ぶこと此くの如し」(此戒時俗居喪者、哀不足而專務文也。即喪與其易也、寧戚、喪與其哀不足、而禮有餘、不若禮不足而哀有餘之意。聖門之學、尚實如此)とある。『論語古義』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 荻生徂徠『論語徴』に「蓋し子游は聖人喪礼を制するの意を説く。止むと云うは、聖人の心、其の哀を致すに至りて止め、必ずしも其のを過求せざるなり。凡そ致字の義は、皆其れをして自然に此の極に至らしむるを謂うなり。我推して之を極むるに非ざるなり。喪礼の如き、皆人の子の哀情をして自然に来たり至らしむる所以にして、聖人の心は、是れを極処と為して、它を過求せず、故に止むと曰う。朱子は喪字・致字にくらし。故に喪を行うの人を以て之を言い、すいきょくを以て之を言う。又た子游を以て細微を簡略にするの弊と為す。亦たあやまらずや」(蓋子游説聖人制喪禮之意。止云者、聖人之心、至於其致哀而止、不必過求其它也。凡致字之義、皆謂使其自然至此之極也。非我推而極之也。如喪禮、皆所以使人子之哀情自然來至、聖人之心、是爲極處、不過求它、故曰止。朱子昧乎喪字致字。故以行喪之人言之、以推極言之。又以子游爲簡略細微之弊。不亦謬乎)とある。『論語徴』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
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