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陽貨第十七 25 子曰唯女子與小人爲難養也章

459(17-25)
子曰、唯女子與小人爲難養也。近之則不孫。遠之則怨。
いわく、じょしょうじんとはやしながたしとす。これちかづくればすなわそんなり。これとおざくればすなわうらむ。
現代語訳
  • 先生 ――「どうも女たちとめしつかいは、あつかいにくいものじゃて。かわいがれば、つけあがる。ほっておけば、ブウブウいう。」(がえり善雄『論語新訳』)
  • 孔子様がおっしゃるよう、「女とものはどうもあつかいにくい。近づけばるし、遠ざければうらむ。」(穂積重遠しげとお『新訳論語』)
  • 先師がいわれた。――
    「女子と小人だけには取り扱いに苦労をする。近づけるとのさばるし、遠ざけると怨むのだから」(下村湖人『現代訳論語』)
語釈
  • 女子 … ここでは、しょう(召使いの女や、身分の高い人の身辺の世話をする女)を指す。
  • 小人 … ここでは、奴僕・下人を指す。
  • 近 … 寵愛する。
  • 不孫 … 「不遜」に同じ。思いあがって傲慢になる。
  • 遠 … 疎遠にする。
補説
  • 『注疏』に「此の章は女子と小人とは、皆正性無く、畜養し難きを言う」(此章言女子與小人、皆無正性、難畜養)とある。『論語注疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 『集解』には、この章の注なし。
  • 唯女子与小人為難養也 … 『義疏』に「女子・小人は、並びに陰閉にして気多きを稟く。故に其の意浅促せんそくなり。養い立つ可きこと難き所以なり」(女子小人、竝稟陰閉氣多。故其意淺促。所以難可養立也)とある。浅促は、才能が劣っていること。『論語義疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『集注』に「此の小人は、亦た僕隸下人を謂うなり」(此小人、亦謂僕隸下人也)とある。『論語集注』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 近之則不孫 … 『義疏』に「此れ養い難きの事なり。君子の人、人愈〻いよいよ近づくれば愈〻敬す。而るに女子・小人は之を近づくれば、則ち其のるを承けて不遜を為して従うなり」(此難養之事也。君子之人、人愈近愈敬。而女子小人近之、則其承狎而爲不遜從也)とある。
  • 孫 … 『義疏』では「遜」に作る。
  • 遠之則怨 … 『義疏』では「遠之則有怨」に作り、「君子の交わりは水の如し。亦た江湖を相忘る。而るに女子・小人は、人若し之を遠ざくれば、則ち怨恨を生ず。人己に接せざるを言うなり」(君子之交如水。亦相忘江湖。而女子小人、人若遠之、則生怨恨。言人不接己也)とある。また『注疏』に「養い難き所以は、其の之を親近せば、則ち多く孫順ならず、之を疏遠にせば、則ち好みて怨恨を生ずるを以てなり。ここに女子と言うは、其の大率を挙ぐるのみ。若し其れ稟性の賢明、文母の類の若きは、則ち論ずる所に非ざるなり」(所以難養者、以其親近之、則多不孫順、疏遠之、則好生怨恨。此言女子、舉其大率耳。若其稟性賢明、若文母之類、則非所論也)とある。また『集注』に「君子の臣妾に於ける、荘以て之にのぞみ、慈以て之をやしなえば、則ち二者の患無し」(君子之於臣妾、莊以涖之、慈以畜之、則無二者之患矣)とある。
  • 宮崎市定は「妾と奴隷とは使いにくいものだ。大事にすればつけあがるし、よそよそしくすれば恨みに思う」と訳している(『論語の新研究』)。
  • 伊藤仁斎『論語古義』に「士君子を待する者、之に交わるに忠信を以てし、之に接するに礼義を以てし、務めて己を尽くすに在るのみ。唯だ女子は陰質、小人は陰類、之を近づく可からず、亦た之を遠ざく可からず。苟くも其の之を御する所以の方を失するときは、則ち家道或いは此れより壊る。故に之を戒む」(待士君子者、交之以忠信、接之以禮義、務在盡己而已矣。唯女子陰質、小人陰類、不可近之、亦不可遠之。苟失其所以御之之方、則家道或自此壞焉。故戒之)とある。『論語古義』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 荻生徂徠『論語徴』に「女子と小人とは養い難しと為す。小人は細民なり。女子は形を以て人に事うる者なり。細民は力を以て人に事うる者なり。皆其の志は義に在らず。故に之を近づくるときは則ち不孫、之を遠ざくるときは則ち怨む」(女子與小人爲難養也。小人細民也。女子以形事人者也。細民以力事人者也。皆其志不在義。故近之則不孫、遠之則怨)とある。『論語徴』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
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