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子路第十三 23 子曰君子和而不同章

325(13-23)
子曰、君子和而不同、小人同而不和。
いわく、くんしてどうぜず、しょうじんどうじてせず。
現代語訳
  • 先生 ――「人物はなじんでも一味にならず、俗物は一味になってもなじまない。」(がえり善雄『論語新訳』)
  • 孔子様がおっしゃるよう、「君子はちゅうきょうどうするが、附和ふわ雷同らいどうしない。小人は附和雷同するが、和衷協同しない。」(穂積重遠しげとお『新訳論語』)
  • 先師がいわれた。――
    「君子は人と仲よく交わるが、ぐるにはならない。小人はぐるにはなるが、ほんとうに仲よくはならない」(下村湖人『現代訳論語』)
語釈
  • 君子・小人 … 一般的に、君子は徳の高い立派な人、小人は人格が低くてつまらない人、の意。
  • 和 … 人と協調する。人と調和する。他人と和合する。
  • 而 … ここでは逆接の意を示す。
  • 同 … 軽々しく同調する。付和雷同する。
補説
  • 『注疏』に「此の章は君子・小人の志行の同じからざるの事を別つなり」(此章別君子小人志行不同之事也)とある。『論語注疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 君子和而不同 … 『集解』の何晏の注に「君子は心和すも、然るに其の見る所は各〻異なる。故に同ぜずと曰う」(君子心和、然其所見各異。故曰不同)とある。『論語集解』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『義疏』に「和は、心争わざるを謂うなり。同ぜずは、立志各〻異なるを謂うなり。君子の人千万、千万の其の心和すること一の如し。而れども習立する所の志業同じからざるなり」(和、謂心不爭也。不同、謂立志各異也。君子之人千萬、千萬其心和如一。而所習立之志業不同也)とある。『論語義疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『注疏』に「君子の心は和するも、然れども其の見る所は各〻異なり。故に同ぜずと曰う」(君子心和、然其所見各異。故曰不同)とある。また『集注』に「和とは、乖戻かいれいの心無し。同とは、阿比あひの意有り」(和者、無乖戻之心。同者、有阿比之意)とある。『論語集注』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 小人同而不和 … 『集解』の何晏の注に「小人は嗜好する所の者同じきも、然るに各〻其の利を争う。故に和せずと曰うなり」(小人所嗜好者同、然各爭其利。故曰不和也)とある。また『義疏』に「小人の悪を為すこと一の如し。故に云う、同ずるなり、と。闘争を好む。故に云う、和せざるなり、と」(小人爲惡如一。故云、同也。好鬪爭。故云、不和也)とある。また『注疏』に「小人は嗜好する所の者は則ち同じきも、然れども各〻利を争う。故に和せずと曰う」(小人所嗜好者則同、然各爭利。故曰不和)とある。
  • 『集注』に引く尹焞の注に「君子は義を尚ぶ。故に同ぜざる有り。小人は利を尚ぶ。安くんぞ得て和せん」(君子尚義。故有不同。小人尚利。安得而和)とある。
  • 伊藤仁斎『論語古義』に「君子の事は、仁義のみ。和すれば則ち物を失わず、同せざれば則ち己を失わず。此れ以て仁の徳を成して、義自ずから其の中に在ることを見る可し」(君子之事、仁義而已矣。和則不失物、不同則不失己。此可以見仁之成德、而義自在其中矣)とある。『論語古義』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 荻生徂徠『論語徴』に「晏子春秋及び左伝に曰く、……和はこうの如し。……君子之を食らいて、以て其の心を平らかにす。君臣も亦た然り。君と謂う所にして、有らば、臣其の否を献じて、以て其の可を成し、君否と謂う所にして、可有らば、臣其の可を献じて、以て其の否をつ。ここを以て政平らかにしておかさず、たみ争心無し。……朱子曰く、乖戻かいれいの心無し、と。皆徒らにこれを心に求めて其の義を失す。蓋し古えの君子先王の道を学ぶは、これ規矩きく準縄じゅんじょうに譬う。故に能く其の可否を知る。苟くも可否の在る所を知らずんば、其の心和すと雖も、いずくんぞ能く相成し相すこと、こうがくとの如くならんや。亦た之を同と謂う可きのみ」(晏子春秋及左傳曰、……和如羹焉。……君子食之、以平其心。君臣亦然。君所謂可、而有否焉、臣獻其否、以成其可、君所謂否、而有可焉、臣獻其可、以去其否。是以政平而不干、民無爭心。……朱子曰、無乖戻之心。皆徒求諸心而失其義焉。蓋古君子學先王之道、譬諸規矩準繩。故能知其可否。苟不知可否之所在、其心雖和乎、烏能相成相濟、如羹與樂乎。亦可謂之同已)とある。『論語徴』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
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