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先進第十一 20 子曰論篤是與章

273(11-20)
子曰、論篤是與、君子者乎、色莊者乎。
いわく、ろんあつきにくみせば、くんしゃか、色荘者しきそうしゃか。
現代語訳
  • 先生 ――「議論ぶりにほれても、人物だか、宣伝屋だか…。」(がえり善雄『論語新訳』)
  • 孔子様がおっしゃるよう、「言論のもっともらしさだけを受け込むと、くんじんであるかも知れず、色のみさかんなくんにぶつかるかも知れぬ。」(穂積重遠しげとお『新訳論語』)
  • 先師がいわれた。――
    「いうことがしっかりしているということだけで判断したのでは、君子であるか、にせ者であるか、わからない」(下村湖人『現代訳論語』)
語釈
  • 論篤 … 議論の篤実なこと。言論がしっかりしていること。
  • 与 … 賛成する。正しいと判断する。
  • 君子者乎 … 君子といえる者だろうか。「乎」は「か」と読み、「~であろうか」と訳す。軽い疑問の意を示す。
  • 色荘者 … うわべだけを飾る見せかけだけの人。「色」は、表情や態度。「荘」は、堂々としていること。
補説
  • 『注疏』では前章の「子張問善人之道」から本章とし、「此の章は善人の行う所の道を論ずるなり」(此章論善人所行之道也)とある。『論語注疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 子曰、論篤是与 … 『集解』の何晏の注に「論の篤きとは、口に択言無きを謂うなり」(論篤者、謂口無擇言也)とある。『論語集解』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『義疏』に「此れも亦た善人の道に答うるなり。当に是れ異時の問いなり。故に更に子曰くと称す。倶に是れ善に答う。故に共に一章に在るなり。篤は、厚なり。言うこころは善人論説する所有れば、必ず篤厚謹敬の辞を出だすなり。故に云う、論の篤きに是れくみするなり、と」(此亦答善人之道也。當是異時之問。故更稱子曰。倶是答善。故共在一章也。篤、厚也。言善人有所論説、必出篤厚謹敬之辭也。故云、論篤是與也)とある。『論語義疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『注疏』に「此れも亦た善人の道なり。故に同じく一章と為す。当に是れ異時の語なり、故に別に子曰くと言うなり。篤は、厚なり。謂えらく口に択言無く、論説する所は皆重厚なるは、是れ善人なるか、と」(此亦善人之道也。故同爲一章。當是異時之語、故別言子曰也。篤、厚也。謂口無擇言、所論説皆重厚、是善人與)とある。
  • 君子者乎 … 『集解』の何晏の注に「君子者は、身に鄙行無きを謂うなり」(君子者、謂身無鄙行也)とある。鄙行は、卑しい行動。また『義疏』に「又た能く君子の行を行う。故に云う、君子者か、と」(又能行君子之行。故云、君子者乎)とある。また『注疏』に「言うこころは身に鄙行無きの君子も、亦た是れ善人なるか」(言身無鄙行之君子、亦是善人乎)とある。
  • 色荘者乎 … 『集解』の何晏の注に「色荘者は、にくまずして厳しくし、以て小人を遠ざくる者なり。言うこころは此の三者は、皆以て善人と為す可き者なり」(色莊者、不惡而嚴、以遠小人者也。言此三者、皆可以爲善人者也)とある。また『義疏』に「又た須らく顔色荘厳なるべし。故に云う、色荘者か、と」(又須顏色莊嚴。故云、色莊者乎)とある。また『注疏』に「言うこころは能く顔色をして荘厳にし、小人をして威を畏れしむる者も、亦た是れ善人なるか。孔子謙にして正言せず。故に与・乎と云いて、以て之を疑うなり」(言能顏色莊嚴、使小人畏威者、亦是善人乎。孔子謙不正言。故云與乎、以疑之也)とある。
  • 『集注』に「言うこころは但だ其の言論の篤実を以て之に与せば、則ち未だ其れ君子なる者たるか、色荘なる者たるかを知らず。言貌を以て人を取る可からざるを言うなり」(言但以其言論篤實而與之、則未知其爲君子者乎、爲色莊者乎。言不可以言貌取人也)とある。『論語集注』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 伊藤仁斎『論語古義』に「袁氏黄曰えり、人浮言の信ず可からざることを知れども、乃ち論の篤きも亦た信ずからざることを知らず。此れ夫子警切のことばなり、と」(袁氏黄曰、人知浮言不可信、乃不知論篤亦不可信。此夫子警切之詞)とある。『論語古義』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 荻生徂徠『論語徴』に「論篤は未だ其の解を得ず。……これを史籍に按ずるに、多くは評論の至れる者を称して篤論と為す。おもうに論篤は必ず時人の論を謂うなり。……言うこころは時論を以てと為さんか。豈に其の君子なる者たり色荘なる者たるを知らんやと」(論篤未得其解。……按諸史籍、多稱評論之至者爲篤論。意者論篤必謂時人之論也。……言以時論爲是歟。豈知其爲君子者爲色莊者乎)とある。『論語徴』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
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