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子罕第九 24 子曰主忠信章

229(09-24)
子曰、主忠信、毋友不如己者。過則勿憚改。
いわく、ちゅうしんしゅとし、おのれかざるものともとするかれ。あやまちてはすなわあらたむるにはばかることかれ。
現代語訳
  • 先生 ――「まごころを第一とし、つまらぬ人とつきあわぬこと。あやまちはアッサリあらためよ。」(がえり善雄『論語新訳』)
  • 孔子様がおっしゃるよう、「人に接するには忠実信義をむねとせよ。自分よりおとった者ばかり仲間にしたがるな。過ちがあったら、つまらぬ体面などにこだわらずアッサリと改めねばならぬ。」(穂積重遠しげとお『新訳論語』、「学而第一8」からの引用)
  • 先師がいわれた。――
    「忠実に信義を第一義として一切の言動を貫くがいい。安易に自分より知徳の劣った人と交わって、いい気になるのは禁物だ。人間だから過失はあるだろうが、大事なのは、その過失を即座に勇敢に改めることだ」(下村湖人『現代訳論語』)
語釈
  • 学而第一8」に重出するが、学而篇では「くんおもからざればすなわあらず。まなべばすなわならず」(君子不重則不威。學則不固)の二句が前文としてある。なお、穂積重遠『新訳論語』では現代語訳が省略されているため、「学而第一8」から引用して補った。
  • 忠信 … まごころを尽くし、いつわりのないこと。忠実と信義。
  • 不如己者 … 自分より劣った人。「不如」は「~にしかず」と読み、「~に及ばない」と訳す。
  • 毋友 … 友だちにするな。「毋」は「なかれ」と読み、「~するな」と訳す。禁止の辞。「無」「勿」「莫」と同義。
  • 過 … 過ち。過失。「あやまてば」と読んでもよい。
  • 憚 … 躊躇する。
  • 過則勿憚改 … 解釈については、故事成語「過ちては則ち改むるに憚ること勿かれ」参照。
補説
  • 『注疏』に「此の章は人の忠信・改過を戒むるなり」(此章戒人忠信改過也)とある。『論語注疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 主忠信、毋友不如己者。過則勿憚改 … 『集解』の何晏の注に「其の主とする所、友とする所を慎み、過ち有れば務めて改む。皆益と為る所以なり」(愼其所主所友、有過務改。皆所以爲益也)とある。『論語集解』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『義疏』に「此の事は再出なり。然る所以の者は、范寧曰く、聖人物に応じて教えを作す。一事時に或いは再言す。弟子は師の訓えを重んず。故に又た書して存せり、と」(此事再出也。所以然者、范寧曰、聖人應於物作教。一事時或再言。弟子重師之訓。故又書而存焉)とある。『論語義疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『注疏』に「主は、猶お親のごときなり。憚は、猶お難のごときなり。言うこころは凡そ親しみるる所は、皆須らく忠信有るべき者なり。忠信己に如かざる者を以て友と為すを得ること無かれ。苟しくも其の過ち有らば、改むるに難しとすること無かれ。学而篇に已に此の文有り。記する者人を異にす、故に重ねて之を出だす」(主、猶親也。憚、猶難也。言凡所親狎、皆須有忠信者也。無得以忠信不如己者爲友也。苟有其過、無難於改也。學而篇已有此文。記者異人、故重出之)とある。また『集注』に「重出して其の半ばを逸す」(重出而逸其半)とある。『論語集注』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 伊藤仁斎『論語古義』に「重ねてづ」(重出)とある。『論語古義』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 荻生徂徠『論語徴』には、この章の注なし。
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