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事（じ）君（くん）章第十七

〔事君章第二十一〕（古文）
子曰、君子之事上也、進思盡忠、退思補過。
子（し）曰（いわ）く、君（くん）子（し）の上（かみ）に事（つか）うるや、進（すす）んでは忠（ちゅう）を尽（つ）くさんことを思（おも）い、退（しりぞ）きては過（あやま）ちを補（おぎな）わんことを思（おも）う。
  • この章は、「開宗明義章第一」にある「事君」という言葉について詳しく述べ、君主に仕える者の心得を説いている。
  • 事君 … 君（きみ）に事（つか）うる。君主に仕える。
  • 古文では「事君章第二十一」に作る。
  • 君子之事上也 … 君子が君主に仕えるに当たっては。
  • 進思尽忠 … 進んで君主の前に出るときは、君主に忠誠を尽くそうと思う。
  • 退思補過 … 君主の前から退出したときは、君主の過失をかばい補おうと思う。
將順其美、匡救其惡。
其（そ）の美（び）を将順（しょうじゅん）し、其（そ）の悪（あく）を匡救（きょうきゅう）す。
  • 将順其美 … 君主に美点があれば、これに従って行うようにする。「其」は、君主を指す。「美」は、美点。長所。
  • 将順 … 従って行う。その通りにする。
  • 匡救其悪 … 君主に欠点があれば、これを正して止（や）めさせる。「其」は、君主を指す。「悪」は、欠点。短所。
  • 匡救 … 悪いところを正し、危険な状態から救う。
故上下能相親也。
故（ゆえ）に上（しょう）下（か）能（よ）く相（あい）親（した）しむなり。
  • 上下 … 君主と臣下。
  • 能相親也 … 互いに親しみが湧いてくる。
詩云、心乎愛矣、遐不謂矣。中心藏之、何日忘之。
詩（し）に云（い）う、心（こころ）に愛（あい）せば、遐（なん）ぞ謂（つ）げざらん。中（ちゅう）心（しん）之（これ）を蔵（ぞう）せば、何（いづ）れの日（ひ）か之（これ）を忘（わす）れん、と。
  • 詩 … 『詩経』小雅・隰（しゅう）桑（そう）篇の一節。「隰桑」は、低湿の地に生えている桑の木。ウィキソース「詩經/隰桑」参照。
  • 心乎愛矣 … 君主を心から愛する気持ちがあれば。
  • 遐不謂矣 … どうして告げずにおられようか、必ず告げて止（や）めさせる。
  • 遐 … 「なんぞ」と読む。疑問を表す。また、『御注』には「遐は遠なり」（遐遠也）とあり、「遠い」と解釈している。
  • 謂 … ここでは「つげる」と読む。告げる。
  • 中心蔵之 … 心の中に君主を愛する気持ちを抱（いだ）いているならば。
  • 中心 … 心の中。「心（しん）中（ちゅう）」に同じ。古文では「忠心」に作る。
  • 蔵 … 隠す。しまい込む。古文では「臧」に作る。
  • 何日忘之 … いつになっても君主のことを忘れることなどあろうか。
  • 何日 … 「何（いづ）れの日（ひ）か」と読み、「いつになっても」と訳す。
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